同人誌のデータ販売と値段への不安
今はもう、同人誌は本にする時代から離れ始めているんじゃないかと思う。
最近はWEB漫画も増えたし漫画雑誌の売上はどんどんと落ちている。
今でこそ同人誌即売会は賑わっているが、一箇所の会場に集まって行う即売会イベントはそのうちなくなるんじゃないかな、と考えていたりもする。
それは文明の発達として喜ばしいことであり、寂しいことであり、不安なことである。
そして、新たな問題点が浮上し荒れてゆくのだろう。
というか、現に荒れている。
紙から画面へ
電車の中での読書は本ではなくスマホに変わった。
雑誌はこぞってWEBサービスを開始。電子書籍はまだ出始めで料金形態、料金体系、相場が上へ下へと慌ただしく動いている印象だけれども、それもやがて落ち着いてくるだろう。
出版社の出してる本や漫画がこうなっているんだから、同人誌もそのうちそうなってくるんじゃないか。
というか、むしろ組織や業界の縛りといったものが少ない同人からオンラインに以降するだろう。
もうしているか。
だが、それはそれで実は色々と問題が発生する。
同人誌のデータ販売の利点と問題点
同人誌ダウンロード版の販売は今や頻繁に行なわれている。
DLsiteやDMMの2つが大きく躍進し、他のサービスが後を追っている。
同人誌委託販売店もダウンロード販売を開始し、今年の春には大手老舗の「とらのあな」も同人誌の電子書籍販売サービスを開始した。
ダウンロード販売の何がいいかって、印刷代がかからないということである。
それ意外にも利点があって、実は同人誌を作る時に気をつけなきゃいけないことってたくさんある。
- 原稿サイズ
- データ原稿の解像度
- ノド側のセリフの位置
- 印刷所によるページ数の規約や制限
その他いろいろ、ホントいろいろある……
ぶっちゃけ面倒くさい
これら全ての面倒事を排除し、印刷代もかからず、そのまま販売ができる。
今やイラストや漫画はPCで作る人が多いので仕上がりのイメージもしやすく、今までよりスムーズな創作が可能となるのだ。
だが、それで問題となるのが「値段」だ
今までとこれからの同人誌の値段
同人誌即売会で売られている同人誌はよく「印刷代くらいは本を取らせて下さいね」という料金だったものが多い。
(壁サークルの話は、全体の数%でしかない話なので除外する)
つまり、人件費などの費用を一切考えず、それこそ原価販売のようなことをやってきてしまっているのだ。
しかし、データ販売となると事情が違ってくる。
データ販売は、一つの元となるデータを作ればいくらでもコピーが可能だ。
つまり、原価が無いようなものだ。
それに値段をつけるとなると、それこそ作品に対する値段となってしまう。
さあ大変なことになってきたぞ。
今までアマチュアの同人作家達は印刷代と頒布数の計算ばかりで、自分の創ったものに対する「作品としての価値」をつけることをしてこなかった。
そういう文化がなかった。というか、排除した。
なぜなら、自分の作品に値段をつけるなんて怖くてできなかったのだ。
だって「趣味で儲けること」に対して異様に厳しい国、日本でそんなことしたら何を言われるかわかんねーし。
今はまだ「同人誌即売会での値段を基準に、データ販売の値段を決める」という感じで値段がつけられているかもしれない。
しかしそれも、元は印刷代を基準にして作られたものだ。
そう遠く無い未来に「印刷された同人誌が珍しい時代」がやってくる。
そうなると印刷代を基準にした値段設定に絶対にイチャモンつけてくる輩が出てくる。
絶対にいる。
そうなる前に作り手側で、何か基準となる値段のつけ方、あるいは相場を再設定する必要があるんじゃないだろうか。
とはいえ、どんな値段でも高いだのと文句を言う「お客様」は出てくるんだろうし、
実はそんなに気にする必要が無い話題なのかもしれない……。