社会人失格人間不合格

I can't be member of society.

同人誌をオフイベで売っても儲けは無い

同人誌は儲からない。

儲かっているのは極一部であり、言わば宝くじに当たったような人だけだ。

「同人誌を作ってる」なんて言うとよく「どのくらい儲かる?」なんて聞かれるんだけど、基本的に赤字である。

「趣味だ」と割り切る人も多いが、できれば創作には金が入って欲しいと考えている自分としては悲しい現状だ。

どのくらい悲惨な状況なのか、実際に計算してみよう。

 

一冊作ることを想定してみる

作る本の内容は1ヶ月分の工数で32ページの同人誌を作って売ると想定する。

表紙カラーでB5サイズのオフセット印刷。

表紙裏表紙含めて32ページなら、本文は28ページだ。

 

それを売ってどのくらい儲けるかを想定する。

想定金額は新社会人の給料くらいの18万円と仮定しよう。

普通に労力をかけて本を作り儲けを出すと考えたら、せめてこのくらいは欲しい。

32ページで18万円の報酬は無名の同人作家の原稿料としては上出来な方だ。

まずはこの金額を稼ぐことを目指そう。

 

必要経費の想定

イベント会場までの交通費・電車で行ける距離と想定して往復3000円

イベント参加費・10000円

この時点で既に合計13000円を経費として失っている。

ぶっちゃけ、本当はもっと色々とかかるが、今回は割愛する(設営のポップや値段札など)

 

さて、この金額にプラスして今回最大の悩みの種「印刷費」がやってくる。

 

同人誌の頒布価格を設定する

まずは同人誌一冊を何円で売るかを計算しよう。

なぜ原価ではなく売値で考えるかと言うと、同人誌には相場というものがある。

相場から大きく外れると、たとえ原価を考慮した価格であっても売れないことが多い。

例外として多くのファンを獲得すれば高値でも売れるが、それは今は考えない方がいいだろう。

 

一般的によく言われている相場と照らし合わせてみよう。

同人誌の相場は1ページ10円で計算するといいと言われている。

表紙がカラーなら100円プラス。

今回は32ページの表紙カラーなので、320円+100円=420円

となれば、ワンコインで買える500円がちょうどいいだろう。

 

500 ー 印刷費 ÷ 部数 = 1冊辺りの儲け

目指す金額は「儲け ー 必要経費 =180000円」である。

今回の場合はイベント参加費と交通費の13000円をプラスする。

結果、完売したら最低でも193000円の利益を出さなければならない。

 

原価と利益の計算 

さて、目標金額も決まったところで原価と照らし合わせてみよう。

今回の計算には、同人誌印刷所「ねこのしっぽ」のサイトから印刷代を参照させていただいた。

仕様はさきほど書いた通り、表紙カラー、32ページ、オフセット印刷だ。

とりあえず100単位から計算してみよう。

100部売るのも相当大変なんだけどね。

 

100部。

もし100部刷って完売して18万円を目指すならば

19300÷100 = 1冊1930円の利益が出るように売らねばならない

つまり、1930+1冊の印刷費で売ることになる

 

表紙カラー32ページの印刷代は25200

1冊あたりの印刷費:25200÷100=252

売値:1930+252=2182

 

この仕様の本を一冊2000円以上で売るのは流石に高すぎる

さあ雲行きが怪しくなってきたぞ

 

200部

じゃあ倍にして200部ならどうだ

印刷費は部数が多いほど1冊あたりの原価は下がる。

今回の想定では、200部だと印刷費は33900円だ。

 

1冊あたりの利益:19300÷200=965

1冊あたりの印刷費:33900円÷200部=169.5

売値:965円+170円=1134.5

 

32ページで1000円以上は、ファンが相当多くないとつらいだろう。

 

400部

さらに倍で400部印刷してみよう。

印刷費は46500円。

 

1冊あたりの利益:19300÷400=482.5

1冊あたりの印刷費:46500÷400=116.25

売値:482.5+116.25=598.75

 

うーん、印刷費を足すとまだ500円を超える。

32ページ600円を売るにはそこそこ人気が必要だ。

 

500部

あとちょっと足して500部!

印刷費は54200円。

 

1冊あたりの利益:19300÷500=386円

1冊あたりの印刷費:54200÷500=108.4円

売値:386+108.4=494.4円

 

やっと相場の500円で売れる値段になった。

 だが、果たして500部売れるのか?

 

一ヶ月に500部を捌いて18万円

この「1回のイベントで500部売れる作家」になるまでの道は、想像以上に険しい。

果たして一ヶ月に500冊コンスタントに売れるものが自分には作れるのか?

イベント初参加の場合、30冊売れたら多い方である。

そこから500に伸ばせるのか?

さらに、500冊を1ヶ月に1冊出すペースを保てるのか?

1冊でも売れ残れば赤字だ。それを回避するためには、もっと多く刷って1冊辺りの印刷代を抑える必要がある。で、多く刷った分は売れるの?

そこまでやって、手に入るのは新社会人並みの給料18万円だ。

普通にサラリーマンやった方が稼げる。

 

儲けを求めていない、求めるのを許されない現状

もう一度言う。

オフイベで同人誌を売っても儲からない。

それでも同人誌を売ってる人たちはどうなっているのかと言うと、作家の多くは恐ろしいことに人件費を無視して本を作っているのだ。

そんな人件費を無視した創作が日本の創作市場を食い荒らしているのが現状なのだ。

考えてみれば恐ろしいことである。

 

「同人誌の相場」なんてものも、創作者を踏みにじるような考え方だ。

でも日本は創作者を見下している国なので仕方ない。

それでも作りたいものがある奴らが、踏みにじられようが泥水を啜ることになろうが、自分の中の創作意欲を発散させている。

彼らが報われる日が来ることを祈る。

 

だが、今の現状はこの惨状だ。

同人誌作りなんてやめておけ。